当たり前のことだが、楽器は演奏する前にちゃんと思った音がでるように調音する必要がある。
さもないと音程がズレて、演奏がしにくかったり、複数でコラボしようとして巧くいかなくなるから。
僕の郷里の父方の家には古くなったクラシックギターがあり、また、母方の家には三味線が置いてあった。
普段誰かが演奏しているのを見たり、聞いたりすることはなく、小学生の僕はときどき気まぐれで触っていた。
古いギターは、弦がずいぶん緩くなっており、おもちゃ屋で売っているおもちゃのギターと同じような、シャラシャラした音がしした。
音程を調整するペグを触ると、徐々に音程が変化するのが面白かった。
が、しかし、どのような音程にすべきかもわからないまま、6つの弦の音の違いや、フレットを変えると音の高低が変わるのを面白がり、ドレミファがひけないものかと、実験を繰り返してみた。
フォークソングが気にいってギターを弾き始めたころ、まったくの初心者の僕にとっての課題は、まず、正確な音程にギターの音程を合わせること、つまり、チューニングだった。
ギターのチューニング3つの方法と最新の方法

ハーモニカ(音程笛)でチューニング
僕の最初のチューニング方法は、ギターの6つの弦の音、E、A、D、G、B、Eが出るハーモニカのような笛の音に合わすことだった。
息を吹きかけ音を出しながら、出てきた音に合わせて調整していく。
笛の音と、弦の音がハウリングしながら近づいていきまた離れていき、それを繰り返してハウリングが生じないなと思ったところで調整終了。
これを一番低い音を出す第6弦のE(ミ)音から初めて、残りの5弦で繰り返す。
そうして一応終わったかなと、じゃらんと6つの弦をかき鳴らすと、あらら、音が随分変である。
というのも、実際に新しいギターや、新しい弦を使って調弦すると、どうも締め付け具合に遊びがあって、どんどん音がずれて行くからだ。
こういう時に絶対音感があれば、よいのだが、僕の耳はそういう鍛え方をまったくしてこなかったから、また、笛のお世話になる。
この繰り返しは、けっこう面倒だ。
何度も笛を吹きながら調弦を繰り返すというのもかっこよくないという気持ちもはたらき、別の方法を試すことにした。
ギターの音程の構造からチューニング

その方法とは、1つの音を規準に6弦を調整する方法だった。
ギターのフレットを押さえると、音は半音ずつ変わっていく。
上のギターネックの写真は、上から下に順番に、第1弦(一番細く高い音を出す弦)から第6弦(一番太く低い音を出す弦)という。
それから、縦に線がはいっているが、左の0が解放音(弦を抑えていないときの弦)、それから、右に、1、2と金属のフレットの左のスペースを押すと、音が半音ずつ上がっていく。
例えば、第6弦の開放音は、ドレミファソラシのミ(E)音になる。
1を押さえて半音上げるとF(シ)音、さらに右に2フレットずらして3を押さえるともう1音上のG(ソ)になる。さらに2フレット右にずらして5を押さえると、もう1音上がってA(ラ)音になる。
つまり、第6弦の第5フレットは第5弦のフレットを押さない解放音A(ラ)音と同じだ。

と、いうことは第1弦の第5フレットを押さえた音が第2弦の0の解放音と同じだから、この音程が一緒にすればよいわけだ。
音程が近づけば区別がつきにくいが、方法がある。
二つの弦の発する音が同じで、同時に引いた時にハウリング(近い音どうしが作る音のうねり)が生じなければ、全く同じ音がでていることになり、第1弦と第2弦の調弦終了ということになる。
うねりが生じなくなるまでには、片方が高く、片方が低く、調弦中にこれが逆になるとという状況が繰り返される。
この方法は、第6弦と第5弦、第5弦と第4弦、第4弦と第3弦でもまったく同じだ、ただし、第2弦と第3弦の調弦だけが他とはちがう。
開放弦がG(ソ)音から始まる第3弦は、第2フレットがA(ラ)音、第4フレットがB(シ)音、第5フレットがC(音)となる。
ところが、第2弦の開放弦はB(シ)音となっていて、第3弦の第5フレットC(ド)ではなく、第4フレットB(シ)音と同じである。
第3弦と第2弦のここだけルールが異なる。
どうして?
っていっても先人の知恵ということになるんだろうね。
例えば、第1弦、第2弦、第3弦を開放弦で弾くとG(ソ)、B(シ)、E(ミ)の和音Emになる。
第1弦の第3フレットを押して、第1弦、第2弦、第3弦、第4弦を弾くと、D(レ)、G(ソ)、B(シ)、G(ソ)で、Gの和音となる。
どちらも、抑えるところが少なくて弾きやすいとか、ね。
で、和音の話しからもどって、調弦の話し。
ギターチューニング用の音叉を使う

ギターの弦の調弦は以上のルールに基づくから、調弦に必要なのは1音であり、確実にその周波数の音を狂いなく発生させるものが、一つあればよいということになる。
そこで、頼りになるのが、音叉だ。
音叉はたったⅠ音だけを出す道具で、ギター調弦ようの音叉が出すのは普通A音いわゆるラ音(440サイクル/秒)だ。
音叉は何かにぶつけて音を出すと、その音叉の構造からずうーっと鳴り続ける。
叉の音自体は小さいものだが、これをギターの本体に接触させると、音が拡大される。
この拡大された音を頼りに、弦の張りを調整して2つの弦の音と音叉の音を接近させ、ハウリングをなくしていく。
こうしてA音を確定したら、あとは、隣り合う弦どうしの調整になる。
しかし、規準になるのは1弦のみ、1音のみだから、いくらフレットであわせても全体を合わせるころにはズレが生じることもある。
このとき第5フレットでの調弦だけではなく、別のフレットでの調弦をする。

例えば、第6弦の第12フレットの音は、倍音(Ⅰオクターブ高い)E(ミ)音だ。
これは、第4弦の第2フレットのE(ミ)と同じ音だ。
同じように、第5弦の第12フレットの音は、倍音のA(ラ)音だ。
これは第3弦の第2フレットのA(ラ)音と同じだ。
第4弦の第12フレットのD(レ)音は、第2弦の第三フレットのD(レ)音と、ちょっとルールが変わるが、
第3弦の第12フレットのG(ソ)音は、第1弦の第3フレットのG(ソ)音だ。
動揺の音程は至る所で関係づけられるが、フィターのフレット板には、第5フレット、第12フレットに印がついており、それを利用するとやりやすい。
高度なテクニックに見えるハーモニクスの技法

高等技術:ハーモニクスによるチューニング
チューニングの高等技術がハーモニクスだ。
ギターの弦が出す音は、その基本となる音だけではなく、その倍音、3倍音といった音が同時に出ている。
その基本となる音を消して、倍音のみを発生させると、その弦のオクターブ高い音を発生させることができる。
上に示したように、たとえば第6弦の第12フレットを押さえたら第6弦の解放音であるE(ミ)のオクターブ高い音がでるが、この時、第12フレットの指をしっかり押さえるのではなく、線に触れる程度にして音を出すと、低い音は出ないままで、オクターブ高い音が出る。
この時、左手の指先は、ちょうどフレットの真上であることが大切。
このオクターブ高く出た音を利用して、第4弦の第2フレットのE(ミ)音と音を調整する方法だ。
先の方法とどう違うの、と思うかもしれないが。第12フレットと別の弦の第2フレットをいちいち押すには、指のポジションを変えている家に、先に押した音が失われるから、比較が難しい。
ハーモニクスだと、音は多少小さくなるが、鳴り続けているので比較、調整しやすい。
それに、ちょっとかっこいい。
ハーモニクスのいくつかの技法
ハーモニクスにも色々なやり方があるが、もっともオーソドックスなものは、第6弦の第12フレットで倍音を出しながら、第5弦の第7フレットで倍音をだして、倍音同士で調整するという方法だ。
パーンという倍音同士が高音域でハウリングをおこしながら調整ができる。
倍音を出すためには、弦に触れるか触れない程度で、元の開放弦の音をミュート(消す)しながら、音を出す。
最初は少し難しいが、なれてくると、ギターネックを指が流れ、ギターと手とがなじみ合っているように見え、音も美しい。
低い弦の第5フレットと、それより高い第7フレットの組み合わせは次のとおり。

低い弦 | 高い弦 |
第6弦第5フレット (第12フレット) | 第5弦第7フレット |
第5弦第5フレット (第12フレット) | 第5弦第7フレット |
第4弦第5フレット (第12フレット) | 第5弦第7フレット |
第2弦第5フレット (第12フレット) | 第1弦第7フレット |
上を見て、第3弦と第2弦のハーモニクスは?と思われたかもしれないが、第3弦の第5フレットのG(ソ)音の倍音は、第2弦の第7フレットの倍音F#(ファの#)とは異なり、第2弦ではG(ソ)音の倍音が出しにくいのでここだけは別に対応する必要がある。

ハーモニクスは、ちょっと音を出すのが難しいが、第5フレットの倍音と第7フレットの倍音をハーモニクスでチューニングするとと、手をほとんど動かすことなく、弦同士を弾いて高低を確かめることができ、慣れて音がちゃんと出せるようになると、ギター演奏に慣れているように見えて格好もよい。
デジタル化したチューニングメーターで可視化

チューニングメーターを使ったデジタルなギターチューニング
人間の聴覚は、鍛え方もあるのかもしれないが、限界がある。
音叉をつかって、ギター弦のチューニングをして、限りなく音叉に近く思えても、ズレることだってある。
音叉の音も、最初の衝撃後は、徐々に小さくなり、時間をかけて調整しようとすると何度も音叉を叩く(鳴らす)必要があり、音が小さくなったらギターに触れて、大きな音を出すとかいう方法もあるが、面倒だ。
そういう限界を超えるための道具として注目されるのが、ギターチューニングメーターだ。
ギターチューニングメータは、ギターが出す音を拾って弦の出すべき音程を目視で調整するチューニング道具だ。
実はしばらくギターを弾いていなかった。
古くなったギターは、ネックが反り、チューニング用のギアが壊れるなど、修理するのも大変な状況で、しばらく触れることもなかった。
そこで、お腹が凹んできたこともあって、超久しぶりにギターを弾こうと、ギターのセットを購入した。
それについてきたのがギターチューニングメーターだった。
チューニングメータでチューニングを可視化
新しいもの好きなので、早速、チューニングメーターで調弦をやってみた。
僕の購入したギターセットはリーズナブルな価格帯だから、それほど高級なチューニングメーターを期待したわけではなかったが、操作してみるとチューニングメーターは面白かった。
セットに入っていた機種は、クリップ式である。
いくらぐらいするんだろうとネットでみると、驚くけど安いものなら300円台であるんだね。
装置型チューナー
LEKATE MT-32W メトロノーム付き

クリップ型チューナー
AROMA AT-101

6つの弦のそれぞれの音に合わせて、ギターの音が高いか低いかを明示してくれ、当然、弦の締め付けの強弱が変化すればそれに合わせてギターの音程の変化を示してくれる。
ぴったり合ったかがビジュアルに分かり、チューニング時間も大いに短縮できる。
調弦結果は、ほぼ完璧になる(ギターによる自然のゆるみは時間が経てば生じる)。
ハーモニクスが不要になるため、ちょっとかっこいいチューニング姿を見せる機会はなくなるが、チューニングのパフォーマンス目的で調弦してるのではないと思えば問題はない。
音叉とチューニングメーター:どちらがよいか?
チューニングメーター派
チューニングメーターのよいところは、確実な音程をビジュアルに設定でき、時間も短縮できるところだ。
ギターのネックにクリップしたり、カポタストと一体化していたりすると、片手で音叉をもっていたりする必要もなく、調弦がし安い。
電子機器なので音叉よりも高いように思えるが、値段は300円台〜数千円台で購入でき、音叉と変わらないと思ってよい。
ポータブルであっても、もの置きタイプは、荷物になる感がある。
音叉派
音叉の良さは、なんといっても持ち運びのしやすさだろう。
音叉の形や音色が大好きという人には、♥マークが。
でも、価格の点では、デジタルマシンであるチューニングメーターより安いとは必ずしも言えない。
まとめ
最終的には個人の好みかもしれないけれど、つぎのようにまとめられるかな。
調音を重視し、きっちりした音程でチューニングするため、目視で確認するということを重視するなら、チューニングメーターが良いように思う。
しかし、調音に自信があり、持ち運びがし安く、ハーモニクスによる調弦がしたいというなら、音叉かなと思う。
機械に頼らないというのは、スキルを感じさせるし、美しい。
こんなところかなあ。
正確な調弦で、よい音を楽しみましょう。

Web情報
音叉とチューニングメーターについては、以下をご覧下さい。